以下に留意ください:
微量栄養素の高用量投与による如何なる食事療法あるいは、薬物療法も人体自身の制御機構を抑制してしまう可能性があります。従って、微量栄養素療法は潜在的な副作用と毒性に関連性があるかも知れません。高用量の微量栄養素の投与は医師の指示に従って行わなければなりません。
23件の大規模観察研究の分析では、カルシウムの毎日摂取量100ミリグラム当たり0.34ミリメーター・マーキュリー(mm Hg)の収縮期血圧の縮小と、100ミリグラム当たり0.15ミリメーター・マーキュリー(mm Hg)の拡張期血圧の縮小が確認されました(25)。プラセボに比較しての血圧についてのカルシウムサプリメント投与の効果を調査する42件のランダム化比較試験の大規模検証では、収縮期血圧において1.44ミリメートル・マーキュリー(mm Hg)の縮小と、拡張期血圧において0.84ミリメートル・マーキュリー(mm Hg)の縮小を確認しました(26)。これらの試験におけるカルシウムサプリメント投与量の範囲は1日当たり500~2,000ミリグラムで、一般的な投与量は1日当たり,1000~1,500ミリグラムです。
DASH (高血圧症を食い止める食物アプローチ)研究では、8週間にわたっての3つの食事の1つに549人がランダム化されました (27) :組み合わせ食物(果物、野菜および、低脂肪乳製品に富む)は、コントロール食物(果物、野菜および、乳製品の乏しい)に比較して収縮期血圧を5.5ミリメートル・マーキュリー(mm Hg)減少させ且つ、拡張期血圧を3.0ミリメートル・マーキュリー(mm Hg)減少させましたが、果物/野菜に富む食物は、コントロール食物に比較して収縮期血圧を2.8ミリメートル・マーキュリー(mm Hg)減少させまた、拡張期血圧を1.1ミリメートル・マーキュリー(mm Hg)減少させました。組み合わせ食物では、コントロールに対して1日当たりカルシウム800ミリグラムの増加を示しまた、果物/野菜に富む食物では1日当たり合計で約1,200ミリグラムのカルシウム量を示しました。異常高血圧(「高血圧症」)と診断されたそれらの参加者において、組み合わせ食物では、コントロール食物に比較して収縮期血圧において11.4ミリメートル・マーキュリー(mm Hg)、拡張期血圧において5.5ミリメートル・マーキュリー(mm Hg)減少させ、一方果物/野菜に富む食物では、コントロール食物に比較して、収縮期血圧において7.2ミリメートル・マーキュリー(mm Hg)、拡張期血圧において7.2ミリメートル・マーキュリー(mm Hg)減少させました(28)。この研究は、推奨摂取量のカルシウム摂取(1日当たり1,000~1,200ミリグラム)が高血圧症の治療に役立つことを示しています (29) 。
PMS は、排卵(中間サイクル)後しばらくして始まり毎月の一定期間を経過すれば(「月経」)治まる、疲労、興奮性、不機嫌/欝症状、体液欝滞および、乳房の圧痛を伴う一連の兆候を言います(30) 。低食物カルシウム摂取がPMSと関連することが複数の研究で判明しており、カルシウムサプリメント投与によって深刻な症状の場合でも緩和することが証明されています(31)。
ランダム化比較試験では、3回の月経周期のためのカルシウムサプリメント(1日当たり1,000~1,200ミリグラム)投与がプラセボグループにおいて観察された30%減少に比較して、全兆候スコアにおいて48%減少したことが判明しました(32, 33,34)。
看護師の健康研究IIに参加した女性を対象とした症例対照研究では、食物からほとんどのカルシウム(1日当たり1,283ミリグラム)を摂取した人々が最も低いカルシウム摂取量(食物から1日当たり529ミリグラムの中央値)の人々に比べてPMS発症のリスク率が30%低かったことが判りました(35)。しかし、この研究においてサプリメントからのカルシウム摂取はPMSに全く効果がありませんでした。
食物カルシウム摂取量を増やすべきか、あるいはカルシウムサプリメントを摂取することでPMS治療と予防に治療上の効果があるか否かを判断するためには大規模な臨床研究が必要とされます。
高カルシウム濃度(全体のカロリー当たりカルシウム)を含む食物は、幾つかの研究において過体重もしくは、肥満の発生率の低減につながりました。低カルシウム摂取が脂肪細胞の蓄積傾向を増加させるホルモンと代謝を変化させる可能性を示唆します(36)。
2年間にわたる試験で、参加者がエクササイズ・グループまたは、対照群にいたかどうかにかかわらず、食物カルシウムの高用量摂取が減量に関連していることが判りました(37)。対照群に比較して、1日当たり1,200ミリグラムのカルシウムサプリメントを投与された年配の女性においてプラセボ対照カルシウムサプリメント試験は大幅な減量につながったことを確認しました(38)。
健康な若い女性を対象とした1年間の乳製品介入試験では、高乳製品グループ(1日当たり1,300~1,400ミリグラムのカルシウム)においてのみ6ヶ月の追跡調査においてわずかながら体脂肪量減少が観察されました(39)。
体脂肪と体重に対するカルシウムの推定効果を定量化するためカロリーが継続して固定される制限給餌研究が必要とされます。
動物とヒトにおける予備的調査研究では、1日当たり1,500~2,000ミリグラムの範囲でのカルシウムサプリメントは、わずかではありますが血中コレステロール濃度を下げる役に立つ可能性を示唆します (40) 。これらの研究から、カルシウム補助食品によってエクササイズと適切な食事の併用で、一旦既に高くなったコレステロール値を下げるよりコレステロール値を正常なレベルに保つ方が遥かに望ましいと考えられます。カルシウムサプリメントによる高コレステロール治療の何らかの有益な効果を確認するためこの分野のより多くの研究が必要とされます。
くる病は子供の骨の軟化と衰弱を引き起こします。実際にはミルク消費量が一般的な先進国では除外されるものの、くる病は未だ世界の多くの地域に存在します。
研究者は、くる病がビタミンDの不足が原因だと考えていました;しかし、1件の研究でカルシウム投与が効果的な治療法であることを立証しました (41) 。