ナトリウム(また、塩化物)不足は、極端な低塩食事においてさえ、一般に食物摂取不足によるものではありません(5)。
低血清ナトリウム濃度(1リットル当たり136ミリモル未満)は、不適当な抗利尿ホルモン(ADH)分泌物または、過度な水分摂取による体液貯留(「希釈性低ナトリウム血症」)に起因する可能性があります。
さらに、激しいあるいは、持続的な嘔吐に起因するか、下痢、過度かつ持続的な発汗、複数の利尿剤の使用および、腎臓病の幾つかの形でナトリウム損失が増加すると、希釈性低ナトリウム血症を引き起こします。
低ナトリウム血症は、マラソンなどの非常に長い持続運動イベントで競争中の人々に特有な状況であると考えられています(56)。このような運動イベント中に低ナトリウム血症を発症した参加者は、水分排泄が不十分であったりあるいは、そのときの長距離走者の水分需要が必要とされる摂取量より少ない可能性を示唆して、比較的液体摂取量が少ないにもかかわらず体液過剰の兆候があると考えられます(57) 。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の使用が、水分排出を阻害することによって運動関連の低ナトリウム血症発症のリスクを増大させる可能性が考えられます(58)。
低血清ナトリウム濃度(低ナトリウム血症)の兆候には、頭痛、吐き気、嘔吐、筋肉の痙攣、疲労、見当識障害および、失神が含まれます。
重症で急性の低ナトリウム血症の合併症は、脳の肥大(「脳浮腫」)、発作、昏睡および、脳損傷を含みます。
急性あるいは、劇症の低ナトリウム血症は、緊急で適切な治療を施さなければ命にかかわる致死性のものである恐れがあります (59) 。