幾つかの考えられるメカニズムは、鉄欠乏性貧血が子供における認識力発達障害につながるという可能性です。貧血のない子供に比べて、貧血症の子供は、動き回り、自らの環境探求に興味がなくそれが知能発達の遅れをもたらす可能性があります(12)。脳への聴覚と視神経のインパルスの伝達が、鉄欠乏性貧血の子供では遅いことが確認されています。神経伝達物質合成も、鉄分欠乏症に敏感な可能性があります(13)。
ほとんどの観察研究では、子供における鉄欠乏性貧血と認識力発達不全、学業不振および、行動に関する問題間の因果関係を立証したけれども、この様な研究で他のタイプの欠乏から鉄欠乏貧血の効果のみを分離することは非常に困難であると考えられます。
1件のランダム化比較試験のみが、2才未満の貧血の子供における認識力の発達のインデックス上で鉄サプリメント投与の明確な効果を確認しました。
4件のランダム化比較試験が、2才を超える子供における認識力と学業達成の上で、鉄サプリメント投与の明確な効果を確認した一方で2件の研究ではかかる効果を全く確認できませんでした。
多くの免疫研究では、幼児の鉄分欠乏症が鉛の腸からの吸収の増加と鉛の血中濃度の増加によることを発見しました。
しかし、鉛毒における鉄サプリメント投与は、確かに鉄分欠乏症なのか、鉛が露出した住宅での継続的な住居など長期間の鉛への曝露によるものなのかにより保留すべきです(3, 14)。
疫学研究では、妊娠した女性における極度の貧血と、低出生体重、早産および、母親死亡率などの不運な妊娠結果との関連性の有力な証拠を提供します。鉄不足は、極度な貧血の主な有力要因であるかも知れませんが、鉄欠乏性貧血が不運な妊娠結果につながったというファクターである証拠は依然不明確のままです(15, 16)。
それにもかかわらず、ほとんどの専門家は、母体の貧血の管理を出生前の医療の重要な一部であると考えています。
特に妊娠後期におけるヘモグロビンの上昇は、またもや不運な妊娠結果につながりますが、この関連性が鉄分の高用量摂取あるいは、鉄サプリメントと関連している証拠はありません(16)。
十分な鉄は、病原菌を殺すために使われる白血球(「例えば、「Tリンパ球」)の分化および、分裂と鉄依存酵素による高反応性酸素の産生を含む幾つかの免疫機能にとって極めて重要です(13)。免疫反応における鉄の限界機能にもかかわらず、特にマラリアについての鉄分欠乏症と感染への感受性間の関係の本質については未だ議論の余地があります。
細胞培養における生体外の研究と動物実験では、変形体(マラリア)やミコバクテリア(結核)などの宿主細胞の中でそれらのライフサイクルの一部を使う感染因子の生き残りが鉄療法によって強化される可能性を示唆します;従って、熱帯地方に住んでいる子供への高用量の鉄サプリメント投与は、臨床マラリアや肺炎などの他の感染症のリスク増加につながってきます。
HIV、結核および、腸チフスなどの伝染性疾患だけでなく、マラリアが一般的な地域では、鉄サプリメントと適切な使用を決定するため比較臨床試験が必要です (17) 。