急速に吸収され、体内から徐々に除去される既成(preformed)ビタミンA(レチノール)によって引き起こされる急性ビタミンA中毒(ビタミン過剰)は比較的希です。症状としては、吐き気、頭痛、疲労、食欲不振、めまい、乾皮症および、脳腫脹(脳浮腫)が認められます (1).
慢性の毒性は、長期間に及ぶ既成ビタミンAの高用量摂取時に認められます。1日当たり25,000IU以上を6年以上継続してあるいは、1日当たり100,000IU以上を6ヶ月以上の継続的摂取は有毒であると考えられますが、個々人によってその影響は異なります (35)。重症のビタミンA過剰症は、肝臓の損傷、出血(大出血)および、昏睡を引き起こします。
高齢者および、常習的なアルコール飲用者を含む特定の人口グループについては、ビタミンA摂取量が少なくても毒性により影響され易い可能性が立証されています(36)。
骨粗しょう症のリスク
複数のプロスペクティブ(前向き)研究の結果では、1日当たり1.5ミリグラム(5,000 IU)以上の既成ビタミンAの長期摂取と高齢者の男性および、女性の骨粗しょう症骨折および、骨塩密度(BMD)減少のリスク増加に関連性があることを示唆しています(38, 39, 40)。β-カロテンではなく、既成ビタミンAの過剰摂取が骨健康にとって副作用を及ぼす危険性があることが判明しています。
これらの観察研究では、過剰なレチノール摂取と骨粗しょう症との関連性を明示できないけれども、限定的な実験データでは、余分なレチノールが骨損失(融食作用)を促進するか(41) あるいは、カルシウムバランス (42)を維持するビタミンD の効力を阻害する可能性のあることを示唆しています。
しかし、他の研究結果では、ビタミンA摂取がBMD減少あるいは、骨折リスク(43, 44, 45)を引き起こす有害な効果と関連性がないことを示しています。多数の高齢者がビタミンA摂取不足状態にあり、それがBMD減少と関連しています。高齢者男性および、女性についての特定の研究では、BMDはRDAに近いビタミンA摂取で最適であることが判明しました (39).
ビタミンAプラスその他の抗酸化物質
ビタミンとライフスタイル:the VITamins And Lifestyle (VITAL) 大規模疫学的調査(コホート調査)から得られたデータの評価では抗酸化物質サプリメント投与と肺ガン発症の因果関係を取り上げました(46). 起草者は、個々のビタミンA(レチノール)、β-カロテンおよび、ルティンサプリメントの長期間投与が全肺ガンの高いリスクと関連性があると推測しています。しかし、専門家はレトロスペクティブ(遡及的)研究が、妥当性を欠く調査設計、偏向的なアンケート方法および、問題の多い統計的評価による不備があったと指摘しました(専門家の鑑定結果も参照してください)。
67例のメタ・アナリシス(研究の統合と研究の評価の実施)研究は、抗酸化物質サプリメントの投与が死亡の阻止に有効な影響を及ぼし得ると言う説得力のある証拠を見出すことはできなかったと結論付けました。さらに、ビタミンA、β-カロテンおよび、ビタミンE が死亡に至るリスクを増大させる可能性さえあるようだと述べています (11)。しかし、専門家たちは、かかる結論が引き出された背景が、多種多様な調査人口(健常者および、病気を発症している患者)を対象とした試験からの極めて不備なメタ・アナリシス用プーリングデータに基づくものでありまた、異なる分析手法が使われていることに深刻な疑念があることを指摘しました (47) (専門家の鑑定結果も参照してください)。
妊娠時におけるリスク: (「許容上限摂取量」を参照してください)
許容上限摂取量
欧州食品安全機関は、既成ビタミンA(レチノール)についての許容上限摂取量(UL) を確立しました(37):
年齢 (才) | UL (ミリグラム/日) |
1–3 | 0.8 |
4–6 | 1.1 |
7–10 | 1.5 |
11–14 | 2.0 |
15–17 | 2.6 |
成人 | 3.0 |
医学研究所の 米国食品栄養委員会(FNB)は、既成ビタミンA(レチノール)摂取のための許容上限摂取量を設定しました (24):
年齢グループ | UL単位 ミリグラム/日 | (IU/日) |
乳児 0~12 ヶ月 | 0.6 | (2,000 IU) |
小児 1~3 才 | 0.6 | (2,000 IU) |
小児 4~8 才 | 0.9 | (3,000 IU) |
小児 9–13 才 | 1.7 | (5,667 IU) |
青少年 14~18 才 | 2.8 | (9,333 IU) |
成人 19 才以上 | 3.0 | (10,000 IU) |
正常な胎児の発育には、十分なビタミンA摂取を必要としていますが、妊娠中の過剰な既成ビタミンA(レチノール)摂取は、先天的障害を引き起こすことで知られています。
1日当たり3ミリグラム(10,000 IU)未満のサプリメントによる既成ビタミンAの投与では、ビタミンAに関連した先天的障害のリスクの増加は一切観察されていません(24).
妊婦は、1日当たり1.5ミリグラム(5,000 IU)以上のビタミンAを含む総合ビタミン剤または、出産前サプリメントの摂取を控えるよう注意しなければなりません。
β-カロテンからのビタミンAが、先天的障害のリスクを増大させることは確認されていません。
レチノール(例えば、エトレチナート、イソトレチノインおよび、トレチノイン)の幾つかの合成誘導体は、重大な先天的障害の原因となることが判っているので、妊娠中あるいは、妊娠の可能性のある期間における摂取は控えるよう注意しなければなりません。
以下に留意ください:
相互作用の可能性があるため、栄養補助食品は、摂取に先立って必ず医師にご相談ください。