ミネラル // カリウム

疾病リスクの軽減

骨粗しょう症

少なくとも4件の断面調査では、閉経前、閉経中および、閉経後の女性のグループのみならず、老齢の男性においても食物カリウム摂取と骨塩密度との間に重要で明らかな関連性があることが報告されました (9, 10, 11) 。研究参加者の平均食物カリウム摂取量の範囲は、1日当たり約3,000~3,400ミリグラムで一方、最も高いカリウム摂取量が1日当たり、6,000ミリグラムを超過しまた、最も低い摂取量が1日当たり1,400~1,600ミリグラムでした。

果物や野菜などのカリウムを豊富に含む食物は、一定の「pH」(酸性または、アルカリ性)を維持するために、人体内で酸を緩衝処理する働きをする「重炭酸イオン」先駆体も豊富に含んでいます。近代の西洋風食事は、アルカリ(果物や野菜)の給源に比較的乏しく、酸性の給源(魚、肉および、チーズ)に富んでいる傾向があります。正常なpHを維持するために、重炭酸イオンの量が不足する時、人体は食物で摂取されて代謝によって発生した酸を中和するため骨からアルカリ性カルシウム塩を動員することが可能です(12) 。果物と野菜の摂取の増加は、食物の正味酸含有量を減らし、骨格内にカルシウムを貯留することができ、あるいはそうでない場合は、正常なpHを維持するために動員され、骨損失につながる可能性があります  (13) 。この理論への裏付けは、幾つかの研究によって提供されました(13, 14, 15)

脳梗塞

幾つかの大規模疫学研究では、カリウム摂取の増加が脳梗塞(「脳卒中」)のリスク減少に役立つことを示唆します。

8年間にわたる追跡調査を行った43,000人以上の男性を対象としたプロスペクティブ研究では、最もカリウム摂取量の高かったグループ(1日当たり4,300ミリグラムの平均摂取量)の男性が最も摂取量の低かったグループ(1日当たり2,400ミリグラム平均摂取量)の男性に比べて脳梗塞の発症率がわずか62%であったことを立証しました(4)

しかし、14年間追跡調査を行った85,000人以上の女性を対象とした同様なプロスペクティブ研究では、カリウム摂取と脳梗塞のリスクとの関係は、特筆すべき結果を示しませんでした(5)

9,000人以上の平均16才を追跡調査した別の大規模研究では、黒人男性と高血圧症を発症している男性においてのみ脳梗塞のリスク軽減につながったことが判明しました(6)。しかし、黒人男性および、女性のカリウム摂取量は著しく白人男性女性に比較して低い(1日当たり1,606ミリグラム対1日当たり2,178ミリグラム)ことが指摘されています。同じ人口からの最新のデータでは、カリウム摂取量が1日当たり1,352ミリグラムより低い人々に比較して、カリウム摂取量が1日当たり1,352ミリグラムより高い人々の脳梗塞発症率が僅か72%であったことが確認されました(7)

65才より年配の5,600人の男性と女性を対象としたプロスペクティブ研究では、低カリウム摂取量が、利尿剤を投与されていない患者の脳梗塞の発症率を著しく増加させたことが判明しました(8)

総合すると疫学データでは、食物カリウムの豊富な給源の適宜な増量は、特に高血圧症また/あるいは比較的カリウム摂取量の少ない患者においての脳梗塞のリスクを著しく低下させる可能性を示唆しています。

腎臓結石

異常に高い尿中カルシウム(「高カルシウム尿症」)は、腎臓結石を発症するリスクを増加させます。カルシウム含有腎臓結石発症の病歴を伴う患者においては、食物由来の酸負荷の増加がカルシウムの尿中排泄の増加につながりました(16)。果物と野菜の摂取量を増加させるあるいは、カリウム重炭酸塩サプリメントを摂取することで食物カリウム(また、アルカリ)摂取を増加させることで、カルシウムの尿中排泄を減少させることが確認されています。さらに、カリウム欠乏がカルシウムの尿中排泄を増加させることが判明しています(17, 18)

4年間の追跡調査を行った45,000人以上の男性を対象とする大規模プロスペクティブ研究では、1日当たり2,895ミリグラム未満の平均摂取量の男性に比較して、1日当たり平均4,042ミリグラム以上のカリウムを摂取した男性グループの症候性腎臓結石発症率がわずか50%であったことを確認しました(19)。12年間にわたって90,000人以上の女性を対象として行われた同様の研究では、最も高いカリウム摂取量(1日当たり、平均3,458ミリグラム)の女性の症候性腎臓結石発症率が、最もカリウム摂取量の低かった(1日当たり、平均2,703ミリグラム)女性の発症率に比較してわずか65%であったことが確認されました(20) 。