ミネラル // ナトリウムおよび, 塩化物

食物ナトリウム塩化物と疾病

骨粗しょう症

栄養素は、骨粗しょう症の発症と進行に効果のあるファクターの1つです。塩(NaCl)の摂取量増加によって、カルシウムの尿排出が増加することが確認されています (11) 。塩の摂取は、複数の研究において骨損失(再吸収)の生化学マーカーと関連することが示されていますが、他との関連性はありせん。

一般的に、断面調査では、ナトリウム摂取と骨塩密度(BMD)間の関連性は確認されていません  (12) 。

しかし、閉経後の女性の2年間にわたる研究で、ナトリウム摂取増加のインジケーターである尿のナトリウム排出の増加が股関節でのBMDの低下と関連することを立証しました(13)。40人の閉経後の女性を対象とした経時的研究では、6ヶ月間の低ナトリウム食(1日当たり2グラム)を徹底した結果、ナトリウム排出、カルシウム排出および、骨吸収のマーカーにおける著しい縮小につながったことを確認しました  (14) 。

食塩摂取の減少が、骨粗しょう症のリスクを伴う場合に患者のBMDと骨折のリスクに対して臨床的に重要な効果があるか否かを見極めるための長期プロスペクティブ研究が必要とされています。

腎臓結石

腎臓結石の主要な構成成分はカルシウムです。食卓塩(塩化ナトリウム)の増加は、カルシウム結石を発症するリスクを増やすことが確認されているカルシウムの尿中排泄を増大させることが確認されています(15, 16) 。

90,000人以上の女性を12年間にわたって追跡調査した大規模プロスペクティブ研究では、平均1日当たり4.9グラム(食塩1日当たり12.6グラム)のナトリウムを摂取した女性たちが、1日当たり平均1.5グラム(食塩1日当たり4.0グラム)のナトリウムを摂取した女性たちに比較して症候性腎臓結石の発症率が30%高かったことが確認されました(17)

しかし、男性での同様の研究では、食塩摂取と症候性腎臓結石間の関係は見出せませんでした  (18) 。

臨床研究では、食塩(NaCl)を制限すればカルシウム結石を形成しがちな傾向を持つ患者の尿中カルシウムが減少することを示し(19) 、カルシウム結石再発の病歴を持つ男性においての2種類の食事による5年間にわたるランダム化比較試験で、塩分と動物性タンパク質の少ない食事が低カルシウム食に比較して結石再発を著しく減少させることを確認しました  (20) 。

胃ガン

主にアジア諸国で実施された疫学研究では、塩漬け、薫製あるいは、酢漬けにされた食物の多量摂取は、胃(胃)ガンのリスクを増大させることを示しています  (6, 7) 。これらの食物は塩分(NaCl)が高く、ニトロサミンなどの発ガン性物質(発癌物質)も含まれています。さらに、塩漬けの食物を多量に摂取する人口では、胃ガンを予防する効果があると考えられる果物や野菜の摂取量が低い傾向があります(8)

胃ガンを発症するリスクは、ヘリコバクター・ピロリ菌による感染と胃の慢性的な炎症によって増大します。高濃度の塩分は、胃の細胞内膜に損傷を与えてヘリコバクター・ピロリ菌への感染とガン促進遺伝子損傷のリスクを潜在的に増加させます。

塩(塩化ナトリウム)自身に発ガン性があるという証拠は殆ど認められませんが、塩魚などの特定の塩漬け食物の多量の摂取は、発症し易い人々における胃ガンのリスクを増大させる可能性があります(7, 9, 10)

高血圧症

血圧における塩分削減の効果

食塩(塩化ナトリウム)と血圧の最大で最も厳重に管理された観察研究は、32ヵ国における10,000人以上の男性と女性を対象に実施されたINTERSALTです。異人口間および、同一人口内双方の分析では、塩分摂取の増加は、血圧レベルの高血圧化につながりました  (21) 。より洗練された統計的手法を使ったその語の分析では、塩分摂取の増加と高血圧かとの関係が一層強力であることを立証することとなりました (22) 。

多くのランダム化比較試験では、異常に血圧の高い(高血圧症)患者と高血圧症でない(恐らくは前高血圧状態の)人々における食塩削減の血圧への影響を調査しました。

メタ・アナリシス(23, 24, 25, 26, 27, 28)では、含まれた試験数と種類は大幅に異なっていましたが、血圧における塩分削減の影響の大きさの推定値は大幅には異なりませんでした。1件のメタ・アナリシスでは、高血圧症参加者における20回の試験と高血圧とは無縁の参加者 (28)における11回の試験から少量の塩分削減の結果を査定しました:少量の塩分削減(1日当たり1.7~1.8グラムの)で、高血圧症の参加者において収縮期と拡張期における血圧でそれぞれ平均5.1/2.7ミリメートル・マーキュリー(mm Hg)、非高血圧症の参加者において収縮期と拡張期血圧における血圧でそれぞれ2.0/1.0ミリメートル・マーキュリー(mm Hg)の減少を確認しました。

TONE(29)とTOHP-PhaseII (30) と呼ばれる2件の2年間にわたる大規模血圧予防試験の結果は特に重要です。TONE では、1日当たり約1.0グラムのわずかな食塩摂取の削減が当初血高血圧治療薬の投与を受けていた年配の成人における高血圧症の抑制改善につながりました。

TOHP-Phase II では、同様なレベルの塩化ナトリウムの削減が、高血圧症を発症していなかったものの肥満であった参加者における収縮期と拡張期の血圧をそれぞれ1.2/1.6ミリメートル・マーキュリー(mm Hg)減少させただけでなく、4年後の高血圧症の発症を14%減少させたことが確認されました。

何人かの臨床医は、高血圧患者におけるわずかな血圧減少の値に懐疑的ですが、複数の観察研究とランダム化比較試験の概要では、拡張期血圧を平均2ミリメートル・マーキュリー(mm Hg)下げることができれば、米国全人口の患者総数においての高血圧症発症率で17%、心臓発作のリスクで5%また、脳梗塞(「脳溢血」)のリスクで15%を減らせる可能性を示唆します(31) 。

従って、血圧におけるわずかでも平均した減少が、公衆衛生上の大きな利益につながると考えられます。

塩分感受性

塩分量に対する血圧反応に基づく「塩分感受性」あるいは、「食塩抵抗性」患者の分類は、これまで人口サンプルに基づかず、未だ時間の経過とともに高度に再現性のあるものだとは考えられていません(32)。「塩分感受性」のほとんどは、短い時間帯(数日または、最高1週間)でのナトリウム摂取(ローディングと枯渇)の極端な操作が関連してきます。

これらの非常に短期の研究で、塩分摂取において長期間にわたって徐々に且つ、少しずつ起こる血圧への何らかの関連性を確認できる証拠がありません。

それにもかかわらず、年配の人々および、アフリカ系アメリカ人で既に高血圧症を発症している人々などの特定の人口のサブグループで、平均的にナトリウム摂取の変化へのより大きい血圧反応を伴う傾向があることは良く知られています(33)。塩分感受性についての遺伝的基礎を調査した研究で、最終的には塩分感受性に関する望ましい形また、信頼のおける分類に至る可能性があります(34)。さらに、食品の質と減量は血圧を減らします(35, 36, 37)。従って、遺伝因子に加えて、恐らく環境の影響が塩分感受性に影響するものと考えられます。

食習慣と血圧

高血圧を防止するための食事療法試験[Dietary Approaches to Stop Hypertension (DASH) trial]では、果物、野菜、全粒粉、鶏肉、魚、ナッツおよび、低脂肪の乳製品を多く取り込んだ食事が、標準的な米国風食事に比較して血圧の上昇した(高血圧性の)人々の血圧(収縮期血圧/拡張期血圧:11.4ミリメートル・マーキュリー[mm Hg]/5.5ミリメートル・マーキュリー[mm Hg])をまた、正常な(正常血圧性の)血圧の人々の血圧(3.5/2.1ミリメートル・マーキュリー)を著しく低下させました(38) 。DASH 式食事は、カリウムカルシウムの含有量が顕著に高く、タンパク質は中程度に高く、全体の脂肪、飽和脂肪および、コレステロールは標準的な米国風食事よりも低くなっています。しかし、ナトリウム濃度は、他の食物成分の効果を評価するために当該研究期間を通して一定のままに保たれました。

次に、DASHナトリウム試験は、DASH式食事療法を標準的な米国風食事コントロールと3つのレベルの食塩(NaCl)摂取で比較しました:それらのレベルは、低(1日当たり2.9グラム)、中(1日当たり5.8グラム)および、高(1日当たり8.7グラム)です (39)。DASH式食事は、コントロールの食事に比較してそれぞれの食塩摂取のレベルで高血圧と正常血圧の人々における収縮期と拡張期血圧を著しく減少させました。食塩摂取の削減は、収縮期と拡張期血圧をさらに減少させました。DASH式食事と食塩摂取削減の組み合わせでは、何れか一方の介入のみよりも尚一層血圧を下げました。

DASH試験の結果は、健康に良い食習慣が高血圧の防止と治療への効果的な食事療法であるというアイデアの裏付けとなります(40)

さらに、24年間追跡調査した88,517人の中年女性を対象としたプロスペクティブ・コホート研究では、DASH式食事療法を順守することにより冠動脈性心疾患のリスクと脳梗塞を著しく減少させることを立証しました(41)

標的臓器障害

持続的な(慢性の)高血圧症は、心臓、血管および、腎臓を損ない、従って心臓疾患および、脳梗塞のみならず、高血圧性腎疾患のリスクも増加させます。多くの臨床研究において、塩分(NaCl)摂取は、心血管疾患による死亡率の増加の原因となる心筋(「左心室肥大」)の異常な肥大に大きな影響を及ぼします  (42) 。

研究では、多量の塩分摂取は、血圧へのその効果から独立した要因で弾性大動脈の構造と機能の変化などの臓器障害を発症させる可能性を示します(43, 44, 45, 46)

心血管疾患

数件の研究では、塩分(NaCl)削減の効果が心血管疾患および、死亡率に及ぼす影響について究明しようとしましたが、結果はまちまちでした(47, 48, 49, 50, 51, 52)。一般に、複数の研究では、直接的な関連性を示唆します(47, 48, 49)

TONE 研究では、塩分削減介入に割当てられた参加者において、心血管疾患減少傾向が示されました(29)

重要なことには、1件の研究では、2回前のTOHP試験のナトリウム介入に入会した最初高血圧症でなかった参加者が、コントロールグループに比較して10~15年後心血管イベントにおいてリスクが25%減少したことを確認しました(53)。このTOHP追跡調査からその後の分析は、ナトリウム-カリウム比率が塩分(塩化ナトリウム)摂取と心血管疾患の逆の関連性を示す補足的な証拠を提供して用量反応関係(54) における心血管疾患のリスク増加と関連したことを示しました。

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