新たにビタミンB9(葉酸)についての食物摂取上の推奨量を設定するために、天然に得られる食物葉酸に比較したサプリメントや強化食品に含まれる合成葉酸のより高い生物学的利用能を考慮に入れて「食物葉酸当量(DFE)」が使用されています (35)。
食物葉酸当量 (DFE):
例えば:60 mcgの葉酸を含む食物の1人前は60 mcg DFEを供給する一方、葉酸の60 mcgによって強化されたパスタの1人前は葉酸のより高い生物学的利用能のため1.7 x 60=102 mcg DFEを供給することとなります。空腹時に摂取された400 mcgの葉酸サプリメントは、DFEで800 mcg を供給することとなります。
注記:DFEは、成人のために決定されました;従って、乳児のための葉酸必要量を決定するのにDFEを使用することはお勧めできません。
1993年、ヨーロッパ食品科学委員会は、ビタミンB9(葉酸)の参照摂取量(PRI)を1日当たりミリグラム(mg)単位で設定しました(36):
年齢 | 男性: マイクログラム/日 | 女性: マイクログラム/日 |
生後6~12 ヶ月 | 50 | 50 |
1–3 才 | 100 | 100 |
4–6 才 | 130 | 130 |
7–10 才 | 150 | 150 |
11–14 才 | 180 | 180 |
15–17 才 | 200 | 200 |
18 才以上 | 200 | 200 |
妊婦 | - | 400 |
授乳中の母親 | - | 350 |
1998年に、米国食品栄養委員会は、食物要件を満たすべき食物葉酸当量(DFE)でのビタミンB9(葉酸)の推奨栄養所要量(RDA)値を確立しました (1):
ライフステージ | 年齢 | 男性: (マイクログラム/日) | 女性: (マイクログラム/日) |
乳児 | 生後0~6ヶ月 | 65 (AI) | 65 (AI) |
乳児 | 7–12 ヶ月 | 80 (AI) | 80 (AI) |
乳児 | 1–3 才 | 150 | 150 |
乳児 | 4–8 才 | 200 | 200 |
乳児 | 9–13 才 | 300 | 300 |
青少年 | 14–18 才 | 400 | 400 |
成人 | 19 才以上 | 400 | 400 |
妊婦 | 全年齢 | - | 600 |
授乳中の母親 | 全年齢 | - | 500 |
妊娠は、細胞分裂の重要な増加やビタミンB9(葉酸)補酵素を必要としている他の代謝過程と関連するので、米国食品栄養委員会によって設定された妊婦のための推奨栄養所要量(RDA)は、妊娠していない女性のためのRDAに比較してかなり高くなっています(3)。
しかし、神経管の発達に関わる重要なイベントは多くの女性が妊娠に気付く前に起きるので、妊婦のためのRDAを設定時に神経管欠損(NTD)防止についての考慮がなされませんでした(10)。
現在判明している科学的証拠が、ビタミンB9(葉酸)摂取が神経管欠損を防止し、特定のガンの発症リスクの低減を助け、循環器系疾患の発症リスクを減らす可能性を示しているので、多くの専門家は成人の場合、食物摂取による葉酸塩および、葉酸に加えて毎日葉酸サプリメント400マイクログラム(mcg)を摂取することを推奨しています。強化食品からの葉酸の平均を上回る摂取の場合でさえ、個人の毎日の葉酸摂取が規則的に1日当たり1,000マイクログラム(=1ミリグラム)の許容上限摂取量を超えることはなさそうです(安全性を参照してください)。
世界各国と様々な団体によって策定された成人のためのビタミンとミネラルの一日当たり推奨摂取量(PRI/RDA)の概要詳細については PDFを参照してください。
ビタミンB9(葉酸)補酵素依存の酵素「メチレン基テトラヒドロ葉酸レダクターゼ」(MTHFR)に関連する遺伝子内の共通の変異は、ホモシステインからメチオニンを形成するために必要とされており、より不安定な酵素 (37) を結果的に生じています。葉酸摂取が不足している場合、異常な遺伝子を持つ個人は低濃度MTHFR酵素従って、高濃度血中ホモシステイン状態にあります(38)。葉酸栄養状態を改善すれば、MTHFR酵素が安定する傾向がありその結果酵素量の改善とホモシステイン濃度が低下します。葉酸についての未解答の重要課題は、現在のRDAが遺伝子変異を持つ個人におけるMTHFR酵素レベルを正常化するのに十分なのか否かの解明です。